わが国固有の人権問題である同和問題は、憲法が保障する基本的人権の侵害に係る深刻かつ重大な問題である。
昭和40年の同和対策審議会答申は、国の責務であると同時に国民的課題であると指摘している。その精神を踏まえて、今度とも国や地方公共団体はもとより、国民一人ひとりが同和問題の解決に向けて主体的に努力していかなければならない。
そのためには、基本的人権を保障された国民一人ひとりが自分自身の問題として同和問題を人権問題という本質から捉え、解決に向けて努力する必要がある。
同和問題は過去の問題ではない。この問題の解決に向けた今後の取り組みを人権にかかわるあらゆる問題の解決につなげていくという広がりをもった現実の課題である。
そのような観点から、これまでの成果を土台とし、従来の取り組みの反省を踏まえ、未来に向けた新たな方向性を見極めるべき時に差しかかっている。
国は、同和問題の解決に向けた新たな取り組みの推進のため「今もなお部落差別は存在する」とし、 平成28年12月16日に『部落差別の推進に関する法律』を施行した。
この法律は、部落差別の解消に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明確にし、教育及び啓発の推進、相談体制の充実、部落差別の実態に係る調査といった具体的施策について定められている。
近年ではインターネットの匿名性を悪用した特定の個人を誹謗中傷する人権侵害や、被差別部落を訪ね学術と称して地名などを公表するなどの動画があげられており、差別を拡散するものであり、決して許されるべきものではなく、国において早急に整備をしていただくよう要望しなければならない。
21世紀は人権の世紀と言われながらも「いじめ」による児童生徒の自殺、親がわが子のを虐待するなど深刻な社会問題となっており、私たちのごく身近な生活の中で人権侵害が起こりうる状況となっている。
人権尊重が平和の基礎であるという共通認識の下、人権が尊重される社会の確立に向け様々な取り組みがされたにも関わらず、依然として社会のあらゆる局面で同和問題をはじめとした様々な人権問題が存在しており、これらの問題を解決するには、これまでの同和教育や啓発活動で積み上げてきた成果と反省にたって、すべての人の人権を尊重していくための人権教育、人権啓発を再構築していかなければならない。
全日本同和会は、昭和35年の結成以来、一貫して同和問題完全解決の、綱領、規約、規則を遵守し、「対話と協調」により、広く国民の理解を得て、今日まで『子らにはさせまい この思い』をスローガンに親が子を思う悲願に込める人間愛を基調とする運動を強く推進してきた。
同和問題の抱える歴史的な束縛を解決せずして、人権教育、人権啓発の成果は期待できるものではなく、同和問題の解決なしに日本の人権問題の解決はない。
我々、全日本同和会は同和問題の早期完全解決と人間固有の尊厳に由来する人権尊重の精神を昂揚し、組織創立時の原点に立ち返り、襟を正して、会員一人ひとりが自己の役割と使命を深く自覚する。幹部は資質を高め、常に人格の錬磨に努め、真に国民の理解を得る運動体として組織の結束並びに拡充を図り、倫理観に基づく運動を強力に展開する。
初志貫徹を期するとともに全国各地に於いて同和行政、差別の実態、対策事業の進捗状況等克服すべき課題を的確に掌握し、実態に即応した運動を創造する。
広く国民の理解と協力を得るため、特に次に掲げる事項の推進と充実を図る。
具体的には
1. 人権問題を学習する場合、それぞれがもつ固有の問題と課題に合わせて、同和問題の早期完全解決を内容とする啓発・教育の推進を求める。
1. 経済基盤の確立には活発なる就労対策、中小企業、零細経営者の救済を求める。
1. 行政機関の主体性の確立と中立公正な施策の推進を求める。
1. 同和問題の根絶を期するため、優れた資質をもった指導者の養成と確保をはかる。
1.『部落差別解消推進法』の充実を求める。
1.児童虐待の防止等に全力で運動の推進を求める。
1,インターネットの悪質な書き込みや、地名が特定できる動画の削除を求める運動を推進する。
以上のとおりり、活動の方針を定め同和問題完全解決を目標に活動を展開する。