全日本同和会は、昭和35年の結成以来同和問題完全解決のため、綱領、規約、規則を遵守し運動を展開することにより、広く国民の理解を得てきた。また、会員各位は同和問題を広く理解するため研修会に参加し、自ら学ぶ努力を重ねてきた。
昨年度は新型コロナウイルス感染症拡大により、世界規模で多くの方が死亡し、人々に恐怖と不安を与えた。さらに社会的、経済的にも大きな影響をもたらした。このような状況の中、全日本同和会は3密を避け、感染予防対策の徹底を図った上で、計画通り研修会を実施することが出来た。これもひとえに参加会員をはじめ、関係各位のご協力の賜物と感謝申し上げる次第である。
その後未だ新型コロナウイルス感染症拡大は収束を図ることが出来ず今日に至っており、本年度も引き続き万全な感染防止対策を講じながら研修会その他の事業を実施していく予定であるため、会員各位のご理解とご協力を賜りたい。
昭和40年同和対策審議会は「同和問題は人類普遍の原理である人間の自由と平等に関する問題であり、日本国憲法によって保障された基本的人権にかかわる課題である。これを未解決に放置することは断じて許されないことであり、早急な解決こそ国の責務であり、同時に国民的課題である。」と答申し、国はこの答申に則って昭和44年、『同和対策事業特別措置法』を制定し、当初は10年間の時限立法として開始された。その後さまざまな法案が提出され、平成14年に終了されるまでの33年間生活環境に関する整備は一定の成果を上げた。
しかしながら、結婚や就職をはじめあらゆる差別は存在しており、心理的差別の解消には至っていない。
国は「現在もなお部落差別は存在する」とし、同和問題の解決に向けた新たな取り組みの推進のため、平成28年12月16日に『部落差別の解消の推進に関する法律』を施行した。
この法律は、部落差別の解消に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明確にし、教育及び啓発の推進、部落差別の実態に係る調査といった具体的施策について定められている。
近年では、インターネットの匿名性を悪用した特定の個人を誹謗中傷する人権侵害や、学術と称して全国の同和地区を紹介する動画があげられるなどの事例が増加している。
また「いじめ」による児童の自殺、病院や養護施設における高齢者への虐待、わが子への虐待など、事態は深刻である。
特定の人種や民族、宗教などの少数者に対する排外主義がエスカレートし、全国各地でヘイトスピーチが繰り広げられるなど、新たな差別事象が発生している。これに対し国は『ヘイトスピーチ解消法』を施行。障がい者に対しても「不法な差別的扱いの禁止」や「合理的配慮の提供」などを盛り込んだ『障害者差別解消法』を施行し、すべての人がお互いに理解しあう「共生社会」の実現に向けての取り組みが進められている。
21世紀は人権の世紀といわれている。人権の尊重が平和の基礎であるという共通認識の下、人権が尊重される社会の確立に向け様々な取り組みが進められているにも関わらず、依然として社会生活のあらゆる局面で同和問題をはじめとする人権問題が存在している。
全世界を恐怖に陥れた、新型コロナウイルス感染症によって感染者及び治療に当たる医療従事者やその家族までをも誹謗中傷の対象とし、命を守るため懸命に働く人たちを精神的に追い詰めている。こうした偏見や差別は、決して許されるべきではないと国は『新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律』を令和3年2月3日に施行し、新たに差別的取扱い等の防止に関する指定が設けられた。
全日本同和会としても、国や地方自治体などと連携を図り、偏見や差別等の防止に向けた普及、啓発、相談体制の拡充を図っていく。
全日本同和会は、昭和35年の結成以来「対話と協調」により国民の理解と合意を得て、今日まで「子らにはさせまい この思い」をスローガンに掲げ、親が子を思う悲願に込める人間愛を基調とする運動を推進してきた。
同和問題の抱える歴史的な束縛を解決せずして、人権教育、人権啓発の成果は期待できるものではなく、同和問題の解決なしに日本の人権問題の解決はない。
我々全日本同和会は、同和問題の早期完全解決と人間固有の尊厳に由来する人権尊重の精神を昂揚し、組織創立時の原点に立ち返り、襟を正して、会員一人ひとりが自己の役割と使命を深く自覚する。幹部は資質を高め、常に人格の錬磨に努め、真に国民の理解を得る運動体として、組織の結束並びに拡充を図り、倫理観に基づく運動を強力に展開する。初志貫徹を期するとともに、全国各地において、同和行政、差別の実態、対策事業の進捗状況等、克服すべきっ課題を的確に掌握し、実態に即応した運動を創造する。
広く国民の理解と協力を得るため、特に次に掲げる事項の推進と充実を図る。
具体的には
1. 人権問題を学習する場合、それぞれがもつ固有の問題と課題に合わせて、同和問題の早期完全解決を内容とする啓発・教育の推進を求める。
1. 経済基盤の確立には活発なる就労対策、中小企業、零細経営者の救済を求める。
1. 行政機関の主体性の確立と中立公正な施策の推進を求める。
1. 同和問題の根絶を期するため、優れた資質をもった指導者の養成と確保をはかる。
1.部落差別解消推進法(理念法)の充実を求める。
1.児童虐待の防止等に全力で運動の推進を求める。
1.新型コロナウイルス感染症に起因する差別的取扱いの防止に努める。
以上の通り、活動の方針を定め同和問題完全解決を目標に活動を展開する。